ルーブル美術館はフランス王家や貴族が所蔵していた美術品を集めたものです。プラド美術館もスペイン王室のコレクションを母体としたものです。ウイーンの美術史美術館も、ハプスブルグ家の美術コレクションを集めたものです。しかし、英国の王室はまだ存在しています。代々の英国王が集めた7000点といわれる美術品は、そのほとんどがバッキンガム宮殿やウインザー城などに飾られており、一般の人は、入場料を支払ってお城を見学するときにしか見ることができません。
バッキンガム宮殿には「絵画の間」という絵を見せるために造られた部屋がありますが、ウインザー城で絵をじっくりと見ている人はほとんどいません。実は私もウインザー城の絵を注意深く見るようになったのは最近です。
王の着替室などという小さな部屋をよく見てみると、デューラー、ブリューゲル、レンブラントなどの作品があります。写真はルーベンスの自画像(1623)です。工房作品も含めれば1500点もの作品を残したルーベンスですが、自画像、それも単身像のものは数点しか知られていません。帽子をかぶっているのは、額が後退しているのを気にしているから・・・と美術書に書いてありました(私が言ったんじゃないですよ)。ルーベンスは外交官も兼ねていたので、ヨーロッパ全土に大量の作品があり、ロイヤル・コレクションもかなりの数を所有しています。
カナレットも多く、ジョージ3世はベネチアの英国領事から絵画50枚、デッサン140枚も購入したそうですが、ウインザーで公開されているのは4点、バッキンガム2枚、他の絵はどこに隠してあるのでしょう?
ウインザーで目立つのは、ロイヤル・ファミリーの肖像画を多く手掛けた画家たちの作品です。ハンス・ホルバイン〈16世紀、ヘンリー8世の宮廷画家)、アンソニー・ヴァンダイク〈17世紀、チャールズ1世の宮廷画家)、トーマス・ローレンス〈19世紀、ジョージ4世の宮廷画家)が有名です。