フェ
ニキアはメソポタミアとエジプトに挟まれた戦略上、地勢状の要塞にあたるため、エジプト、アッシリア、バビロニア、アケメネス朝ペルシア、ギリシア、ロー
マに相次いで支配されます。ところがフェニキアの諸都市は、他国の支配下に入っても消滅することはありませんでした。支配者の力が強大だと分かると、フェ
ニキア人が異民族に抵抗せず従属し、ペルシアには艦隊を、マケドニアにはレバノン杉を貢いでその機嫌をとりました。そのため、フェニキアの諸都市は自治権
や地中海での交易権を認められて生き延びました。
天然の良港であるビブロスはレバノン杉の積み出し港として紀元前2600年ごろから発展
しました。芳香を放って朽ちにくいレバノン杉は各地で珍重され、木材に乏しいエジプトでは建材は神殿や船に、樹液はミイラつくりに用いられました。ファラ
オたちは高価な杉を大量に輸入した上、ビブロスの王に財宝を送り、貿易が絶えぬよう機嫌をとっていたと言われます。ギリシア時代には紙の原料となるパピル
スをエジプトから仕入れ、ギリシアをはじめ地中海沿岸諸国に提供していたので、ギリシア人はパピルスをビブロスと呼び、聖書(バイブル)の語源となりまし
た。ローマ時代には巻貝から採れる紫色の染料が珍重されましたローマ時代には珪素が多い海砂を原料とするガラス製品を生産し輸出して利益を得ました。その
他に、アラビアの香料、エジプトの金、アフリカの象牙、イベリアの銀、ギリシアのワインなどを扱って繁栄を築きました。
ライオンに襲われた黒人。金箔と、ラピスラズリなどで象嵌された象牙細工は、フェニキアで作られた家具装飾の一部だと考えられています。手先の器用な彼らは、金属加工・象牙細工などの技術にも長けていました。紀元前9~8世紀。
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