2017年11月5日日曜日

マーチャントバンク

マーcジャント・バンクとは、預金、証券や手形の引き受け・発行、投資管理、リース、企業の合併・買収の仲介や、海外の政府、政府系機関、大企業との取引をアレンジする業務を行う金融機関のことです。
そのほとんどが欧州大陸で活躍した商家の末裔です。19世紀初頭の英国では国際銀行業務のノウハウがなく、必要とされる海外情報、外国の風習・商慣習、外国語等の知識や理解力を持ち合わせている人は無に等しい状況でした。大英帝国の勢力・商業圏の拡大に伴い、世界的銀行システムの構築が急務となっていきました。そのギャップを埋めたのが、世界各国からの移民たちでした。 

ロスチャイルド家はフランクフルトシュローダー家とウォーバーグ家はハンブルグ、ブラント家はペテルスブルグ、ブラウン家はアイルランドラザー家はアルサス、モルガン・グレンフェルはアメリカ人によって1838年ロンドンに設立されました。かれらは銀行家になる前はいずれも商人たちで、さまざまな商品を取扱っていましたが、やがてより収益性の高い金融業務へとシフトしていきました。
外国貿易に携る商人たちのための外国為替業務では大胆さ、直感、判断力、知識などが強く求められました。戦争、革命、出入港禁止令、政府の破綻、コミュニケーション遅延などの障害発生等で、大きなリスクを負うこともありますが、うまくいけば莫大な収益を上げることができました。

マーチャント・バンクは英国の植民地政策を支援し帝国の金融システムを構築しながら、その間世界的規模で情報システムを確立、エイジェント・ネットワークを構築しました。かれらは欧州大陸を荒廃させたナポレオン戦争の資金調達でも多くの国々や政府を支援し、かつ戦後はその復興資金の手当ても行って、莫大な収益を上げました。
その結果、英国は外国からの借り入れもなく金融的に見て最も安全な国として、世界的に益々注目されるようになりました。そのため、欧州大陸の資本家たちは、ロンドンの大きなマーチャント・バンクに資金を移動させたこともあり、英国通貨ポンドは世界通貨としての地位を勝ち得ることになり、戦後の復興資金を求め、フランス、プロシア、オーストリア、ロシア、ポルトガル、スペインなどの欧州大陸諸国のさまざまな人々がシティー詣でを行う結果となりました。

マーチャント・バンクは国、都市の支援ばかりでなく鉄道建設や公益事業の資金調達、運河やコミュニケーション施設の建設、軍全体の装備の資金調達まで行い、こうした国々の国家経済に大きな影響を及ぼすキングメイカーとなり、しばしば世界史を彩る事業支援のページを作り上げていきました。

19世紀になると、シティーの国際感覚と人脈、情報ネットワークに支えられ、豊かな国際ビジネスの経験を有する英国のマーチャント・バンクは情報を駆使して、国内余剰資金を利益のあがる海外投資に振り向けたのでした。

Baring Brothers & Co.
ベアリング家はドイツのブレーメンから1717年に英国にエクセターにやってきて、1763年にロンドンに店を構えました。19世紀最強のマーチャント・バンクで、彼らが手がけた史上最大の不動産取引(ルイジアナをフランスからアメリカが購入)
の記録は今も破られていません。

1890年になると、注力していた南米が大不況に陥り、危機存亡の時を迎えますが、この危機は、ベアリングの官・政・財の各界に張り巡らされた人脈が働いて、マーチャント・バンク団の協力により回避され事なきを得ました。

しかし同社は1995年にシンガポールで発覚したトレーダーによる巨額な損失を伴う
不正取引で破綻し、その後オランダの金融最大手INGに救済買収されました。

Fleming (Robert)&Co.
甥が007のイアン・フレミング

Hambros Bank
デンマーク商人が設立し、スカンジナビア半島と英国間の貿易と、ダイヤモンド取引を得意とした銀行。


Hill Samuel & Co.
サミュエル商会とゴールド商人のヒル商会が合併した銀行。先代マーカス・サミュエルは、もともとオリエントの貝殻細工を扱う貝殻貿易商社を経営していました。1875年にノーベル兄弟がバクー油田(カスピ海、アゼルバイジャン)開発に成功し石油時代が到来したのをきっかけに、1897年にシェル石油を設立しました。
このオーストラリア支部が豪州マッコーリー銀行で、民営化されたテームズ・ウォーターの株主です。


Kleinwort Benson
1830年のリバプール・マンチェスター間の機関車ロケット号を融資した世界初の鉄道王。

Lazard Brothers & Co.
もともとニューオリンズで開業し、ロンドンとフランスにオフィス開設しました。金塊の輸入や穀物メジャーとの関係が深い銀行。

Morgan Granfell & Co.

モルガン・グレンフェル銀行はピーボディ商会から発祥しました。
タイタニック号を所有したホワイトスター汽船の株式オーナー。


Samue Montagu & Co.
金塊商人から男爵になったサミュエル・モンタギューが経営する銀行。

Schroder(J.H.)Wagg & Co.
1870年に日本政府が初めて発行した外債の主幹事を務め、新橋~横浜間の鉄道資金の調達に貢献しました。


Warburg (S.G.)& Co.
ハンブルグ商人が設立した名門銀行。初めて敵対買収を手掛けました。

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