テート・モダンでは現代アート(20世紀と21世紀の世界各国の芸術品)が展示されています。彫刻、絵画だけでなく、ビデオやパフォーマンスまでアートと考えられ、従来のような年代順ではなく、「流動する状態」「観念とオブジェ」「素材の言動」「詩と夢」という4つのテーマに分けて展示されています。展示品は年中変わるし、分かりにくい現代アートですが、面白いレクチャーを聞けば、少しは理解することができるかもしれないと思い、今日は笹山先生の西洋美術史講座のテート・モダン見学に参加してきました。今日見た作品を中心にご紹介しますね。
これはウンベルト・ボッチオーニの作品です。どう見ても走る兵士に見えますが、この作品のタイトルは「空間の中のユニークな連続の状態」だそうです。解説を読むともっと分かんないですよ~。未来派?「猛スピードで走る車は、サモトラケのニケよりも美しい」ですって。
これは、先生が「ロボコップ」と呼んでいるピカソの作品。本当のタイトルは「座る裸婦」です。1907年から1914年の間、パリで活動したピカソとブラックはキュビスムという新しい芸術様式を打ち立てました。キュビスムとは、題材を一度に多数の視点から捉え、その断片を配列した絵画です。美術様式の発展において、このキュビスムは革命的だったようです。
何これ?アートなの?と思われるかもしれませんが、有名なアンディ・ウォルホールの作品です。20世紀の消費文明と大衆的視覚文化に焦点をあてたのが、ポップ・アートなんだそうです。
これはルネ・マグリットの「無謀な眠る人」という作品です。なんで「無謀な」のかは分かりませんが、主人公は眠ってますね~。まず、この絵を見るには「シュルレアリスム」という時代を理解しなければなりません。物質主義に反対し、精神分析学者のフロストの夢と精神に関する研究に感化され、心の奥深くに隠された部分を探ろうと試みたのがシュルレアリスムの芸術家たちなのだそうです。人間が無意識の中でどのように隠れた欲望の象徴を作り出すかを説明したフロイトの「夢判断」という著書を熟知していたマグリットは、この作品に謎のオブジェを描き込みました。フロスト的にはロウソクは男性器、山高帽は女性器を代表しているそうですが、後のオブジェの意味は謎に包まれているそうです。灰色の板にに埋め込まれたシンボルは思考のようにも解釈ができ、板を墓石に、眠っている人が入っている箱を棺に喩えることもできます。
バーネット・ニューマンの「アダム」。そう、あの「アダムとイヴ」のアダムだそうです。キャンバスを縦に走る縞で聖書の創世記や天地創造を象徴する光の帯に由来する・・・って言われてもねえ・・・分かりますか?で、この作品を理解するには、1940年代からニューヨークで活躍した、抽象表現主義(抽象的でありながら同時に表現力を持ち、感情を表す芸術)と呼ばれるアーティストのことを知らなければなりません。で、このニューマンの作品ですが、この人は赤系統の色を人間の存在に結び付けていたそうで、縦縞は直立した人間の身体を極限まで簡素化したものを表現しているそうです。分かりました?
ジャクソン・ポロックの「サマー・タイム」です。ポロックは、床に置いた大きなキャンバスの上に絵の具を注いだり垂らしたりする画期的な手法を開発しました。表現は抽象的ですが、リズムのあるパターンは、祭りの行列や、ジャズ音楽の表現など、楽しいイメージを受けますよね~。
マーク・ロスコーの作品は暗いです。「僕は悲劇、陶酔、破壊などといった、人間の根源的な感情を表現することにしか興味がない」と語った人です。この作品はニューヨークのレストランのために描かれたセットでしたが、テート・モダンが譲り受けることになり、美術館も彼の作品だけを展示する部屋をわざわざ造ってセットで展示しています。照明が暗く、落ち着く部屋です。居眠りするのにいいかも。
アンリ・マチスの84歳の時の作品。マチスは晩年絵を描くことができなくなったので、「切り絵」で表現することを思いつきました。アシスタントに色を塗らせた紙を、マチスが大まかな形に切り取り、下塗りしたキャンバスに、厳密な指示に従って、弟子が貼り付けていきました。この作品の題名は「かたつむり」です。そう言われれば、カタツムリの殻の螺旋状のパターンが見えてきますね~。それに左上の紫の部分にも、角を出したカタツムリのような小さな影が見られます。元気なおじいちゃんですよね~。
これは、ルチオ・フォンタナの「空間の概念「待つ」」という作品です。キャンバスをナイフで切っただけですが、それを最初にやったことがすごいんです。絵画の世界は所詮虚空の世界なのだというような解釈もあるみたいですですが・・・。見た目シンプルで、いい作品ですよね~。
モンドリアンの「コンポジション」。1935年の作品。直線の格子に原色と白黒のみを使った作品で、幾何学的抽象画って言うのだそうです。美術の教科書に必ず出て来ますよね~。中学生の頃、同じような絵を描かされませんでした?
マルセル・デュシャンの「泉」。「あの~便器にしか見えないんですけど~」というあなた。それが正常です。これが芸術品に見える人の方が心配です。「泉」はデュシャンが「レディ・メイド」と呼んだシリーズで最も有名な作品です。既製品(配管業者から買い取った小便器に「R.Mutt」とサインしただけ)を芸術品と称して美術館に展示したものです。芸術はユニークでなければならず、アーチストには特定の技量が必要とされるという概念に挑戦するという目的があったと作者は言ってますが・・・ユニーク過ぎませんか?
5階の真ん中の部屋は天井が高く、広々としています。ここには20世紀後半のミニマリズムの作品が展示されています。ミニマリズムはモンドリアンの幾何学的な抽象絵画と、デュシャンのレディメイドの後にアメリカを中心に発達しました。製作過程の痕跡を作品に残すことを嫌い、工業用素材とスムーズな表面を好み製作を加工業者に依頼する場合もありました。ですが作品の素材は美しく、親しみやすいものが多いのも特徴です。
写真の格子の床はカール・アンドレの作品です。金属や石のタイルを並べたシンプルな構成で、普通の工業素材の美しさを表現しています。「触ってください」と作品の上を歩くように指示するのも、新しい挑戦です。
その向こうに見える銅の箱はドナルド・ジャッドの作品です。絵でも彫刻でもない中間に位置するオブジェを作って「特殊な物体(Specific Object)」と呼んだそうですが、う~ん、わかんな~い。
最後にロバート・モリスの「鏡の立体」を見ました。ミラー・ガラスでできた、まったく同じ4つの立方体が、作品を見ている人を映しています。観客参加で成り立つ芸術なのだそうです。
4階のバルコニーから、テームズ川の対岸を見るのも忘れないでください。セント・ポール寺院が正面に見えて綺麗です。
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