今様見立士農工商 職人 歌川国貞
浮世絵の場合、特徴的なのは、この「下絵を描く」、「版木を彫る」、「紙に摺る」という3つのプロセスが、それぞれ専門職として分業化されています。歌麿だろうが北斎だろうが写楽だろうが、浮世絵師といわれる人たちが描くのはあくまで「下絵」までです。
絵師
絵師は版元(出版社)からの依頼により下絵を描きます。絵の内容は依頼人である版元の意向に左右されます。
描きあがった下絵は、彫師にまわされる前に地本問屋(草双紙や浮世絵など、庶民向けの出版物を扱う版元の組合)の検閲を受けなければなりません。公序良俗に反していないか、幕政を批判するような内容でないか、などの細かいチェックを受けた上で、特に問題がないと認められたものには、極印(きわめいん)または改印(あらためいん)といわれる許可印が絵に押されます。
彫師
版木が色数に応じて複数枚必要なこともあって、何人かで分担して作業にあたります。分担は職人の力量に合わせて決められたようで、たとえば役者の顔や髪の部分を彫るのは熟練した職人、着物の柄や背景などはまだ若い職人という具合に、熟練度にあわせた作業分担で連携して作業にあたっていたようです。
墨版が完成すると、それを元にまず何枚かが墨一色で摺られます。校合摺りは色版作成の元になるもので、このときに摺られる校合摺りの枚数がそのまま色版の枚数になります。
必要な枚数の校合摺りが用意できると、いったん絵師に戻されて色指定が施されます。
絵師は、まだ自分の頭の中だけにしかない完成形の絵のイメージを、正しく色ごとに整理・分解しながら紙に記入していきます。
この色分け作業は後の色版づくりの元になりますので、絵師はきちんと1枚に1色ずつ分けて描かなければいけませんでした。
通常の錦絵の場合、15~20色ほど重ね摺りしましたから、校合摺りもその色数分、20枚ほどが用意されたそうです。絵師の色指定が完了すると、再び彫り師に返されて、こんどはそれを元に色ごとの版木を起こす工程へと進みます。
絵師の色指定を元に、彫師は色ごとのパーツとなる版木(色版)を作成します。
墨版を作ったときと同じ要領で、色指しの済んだ校合摺りを板に貼り、色指定の部分を残して削り取っていきます。色のつく部分がとても小さい場合は、「彫りぬき」といって、版木の節約のために他の色版の空いたスペースを使いまわすこともあったようです。また、中間色を表現するときも、たとえば緑が一部分だけ必要な場合は、その部分を青の色版と黄色の色版に持たせておいて、重ね摺りすることでその色を出し、版木をその分節約するといったことも行われました。
摺師
基準となる墨線から刷られ、それに色が重ねられます。
摺師は色版がズレないよう、「見当」という目印を目安に各色を摺り重ねていきます。
浮世絵独特の「ぼかし」の技法もこの摺師の技術のひとつで、顔料の乗せ方と水分量、微妙な摺り加減で見事なぼかしのグラデーションをつけています。
完成品は商品として店に並びます。東海道五十三次 庄野白雨 歌川広重
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