英国便り
ロンドン郊外在住の日本人ブルーバッジ・ガイドが、毎日の生活を通して英国の魅力をお伝えします。
2016年1月30日土曜日
大英博物館のイスラム美術
大英博物館のイスラム文化の勉強会に参加しました。
マホメットは6世紀後半にメッカに生まれました。若い時から隊商に加わって各地を往来して、キリスト教徒やユダヤ教徒に接し、一部の支配者が利益を独占しているため、多くの貧民が苦しい生活を強いられている当時のアラビアを見て、民衆を救うためにイスラム教を始めました。
アラーを唯一の神とする一神教で、他の神や聖像を拝むことを禁止し、アラーの前での万人は平等で階級や身分の違いを否定しました。イスラム教ではマホメットは預言者であり、経典はコーランです。
マホメットの教えは貧しい人々の支持を得ましたが、特権を守ろうとするメッカの有力者の圧迫を受け、622年にメッカからメジナに本拠地を移すことになりました。この聖遷をヘジラといい、イスラム教の暦ではこの年を紀元元年としています。イスラム帝国は、マホメットの死後も後継者たちによって拡大し、8世紀にはアジア・アフリカ・ヨーロッパにまたがる大帝国になりました。
部屋に入って一番始めに見たのは、陶器製のモスクのランプです。
1549年にオスマン・トルコで作られたものですが、有名な岩のドームにあったものだそうです。岩のドームはアブラハムが息子イサクを犠牲に捧げようとした場所に建てられ、692年に完成しました。黄金のドームは11世紀のもので、タイルは1554年に張り直したものだそうです。
メッカに向かって礼拝をしなくてはならないイスラム教徒にとって、どこにいてもメッカの方向を示してくれるコンパスは必需品でした。
これは墓石ですが、お墓もメッカに向かって造られるのだそうです。
ガラスの歴史は西アジアで始まりますが、ヘレニズム時代にシリアとエジプトで発展しました。さまざまな形や大きさのガラス器を製造することを可能にした吹き技法は、紀元前50年ごろにシリア・パレスチナ地方で発明されています。写真は9世紀から10世紀のシリアで作られたガラスの壷。中央は無色の容器に部分的に緑色のガラスを被せその上から線カットで彫るカメオ・ガラス手法。左奥は金と青のエナメルをガラスの間に挟んだサンドウィチ技法です。
アストロラーベは星座早見表のようなもので、太陽、月、星、の位置測定、経度と現地時刻の変換などに使われました。1日に5回メッカに向かって祈らなければならないイスラム教徒にとって、航海中も現地時間を知る必要があったので、イスラム圏で特に発達しました。
メッカの方角が分かるコンパスも必需品でした。
中国とヨーロッパの中間にあるイスラム圏はシルクロードの中継地点で貿易が栄えました。
こちらは元の時代の中国で造られた青花磁器。
こちらはオスマントルコのイズニックで中国の磁器を真似して造ったファイアンス(ガラス質陶器)の皿です。
11世紀にエジプトで作られたラスター彩のガラスのボール。ラスター彩装飾は、銀と銅などの金属化合物を顔料として彩画して焼き付ける技法です。
これは11世紀エジプトのカットガラスです。
これは1232年にイラクで造られた象嵌の水差しです。打ち出された真鍮に文様を彫り、表面に銀と銅を埋め込む技法で、イスラムの金属細工技術の中でも高度な技術が要求さ れました。
私のお気に入りは、12世紀のセルジューク・トルコ(イラン)で造られたミーナーイー(エナメルの意味)陶器。白地に鷹狩が描かれていて、人物がムーンフェイス(丸い顔)なのが可愛い。
13世紀のペルシャで造られたラスター彩陶器は、たくさんの人物像を器面いっぱいに描いているのが特徴です。ラスターは光輝を意味する英語で、白地の陶器に硝酸銀や酸化銅で文様を描き、再度焼成する技法です。
セルジューク・トルコ時代に造られた象嵌の水差し。
15世紀のエジプトの3段重ねのランチ・ボックスには感動しました。日本にもこんな形の弁当箱がありますよね~。
14世紀のマルムーク朝のエジプトでは、モスクのランプのために金張りのガラスのランプが大量に製作されました。
オスマン・トルコでは中国の青花磁器の影響を受けたモスク・ランプが造られました。
1530年ごろのオスマン・トルコでは小さな花と草葉を螺旋状に繋いだ繊細な文様を青で描いたユニークなタイプの陶器が流行しました。
オスマン・トルコといえば、イズニーク陶器でしょう。
本場のトルコより、英国の大英博物館とヴィクトリア&アルバート博物館の方が、イズニーク陶器がたくさん見られるのだそうです。
多彩釉陶器でカーネーションやチューリプなどの草花が描かれているのが特徴です。
水色とか、エメラルド・グリーンとか、
「アルメニアの赤土」と呼ばれる赤色の釉薬が開発されました。
ちなみに柿右衛門が赤色を開発したのはそれから100年後です。
最後はインドのムガール帝国です。ムガールとはペルシア語でモンゴルのことで、イスラム教とヒンズー教が混じった独特の文化です。写真は17世紀に造られた水煙草を吸うための道具だそうです。
1600年ごろ造られた翡翠の亀も面白いですね。ちなみに翡翠はとても硬い鉱物で細工するのが難しいのだそうです。
0 件のコメント:
コメントを投稿
次の投稿
前の投稿
ホーム
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿